旅のテーマ
日本三景とは
江戸時代から旅人が目指した松島・天橋立・宮島。海に浮かぶ島影、海を横切る砂州、潮の中に立つ社殿と、同じ「海の景色」でありながら三つとも姿がまるで違う。
日本三景は、宮城県の松島、京都府の天橋立、広島県の宮島の三か所を指す。国や自治体が近代に選定した名所ではなく、江戸時代の学者が書き残した評価がそのまま旅の目標として受け継がれてきたのが、ほかの「三大○○」と違うところである。三か所とも国の特別名勝に指定されている。
日本三景 一覧(北から南へ)
| 景勝地名 | 所在地 | 見どころ |
|---|---|---|
| 松島 | 宮城県松島町 | 松島湾に260余りの島が浮かぶ多島海。松をいただく奇岩のあいだを遊覧船が縫って進む。『おくのほそ道』の松島の段に芭蕉自身の句はなく、同行した曾良の句だけが残された。港のそばには伊達政宗が再興した瑞巌寺と、海へ張り出す五大堂が立つ。 |
| 天橋立 | 京都府宮津市 | 宮津湾を横切って全長約3.6kmの砂州が伸び、5000本を超える松が根を張る。南の天橋立ビューランドからは龍が舞い上がるような「飛龍観」、北の傘松公園からは「斜め一文字」。股のぞきで見ると砂州が反転し、天へ架かる橋になる。 |
| 宮島(厳島神社) | 広島県廿日市市 | 棟の高さ16.6mの大鳥居が海中に立ち、満潮には社殿ごと海に浮かび、干潮には鳥居の根元まで歩いて近づける。厳島神社は1996年に世界文化遺産へ登録された。背後の弥山(標高535m)へはロープウエーで獅子岩駅まで上がり、そこから山頂へ歩く。 |
日本三景の由来
寛永20年(1643年)、儒学者の林春斎(林羅山の子)が地誌『日本国事跡考』に松島・天橋立・厳島を並べ、「三処奇観」と記した。この語が旅の言葉として広まるのは約半世紀後で、元禄2年(1689年)に天橋立を訪れた貝原益軒が『己巳紀行』に「日本の三景の一とするも宜也」と書いた。これが「日本三景」という語の文献上の初出とされている。
漢文の地誌に並べられた三つの地名が、実際にその地に立った学者の一文を得て旅の目標に変わった、というのが日本三景の成り立ちである。林春斎の誕生日にちなみ、7月21日は日本三景観光連絡協議会が定めた「日本三景の日」となっている。なお同じ「三大」でも、日本三名園の呼び名が確かめられるのは明治期の出版物からで、日本三景のほうが二百年以上さかのぼる。
新日本三景との違い
日本三景とよく混同されるのが新日本三景(日本新三景)で、こちらは1915年(大正4年)に実業之日本社が行った全国投票で選ばれた、大沼(北海道)・三保松原(静岡県)・耶馬渓(大分県)の3か所を指す。江戸期の文人の評価に由来する日本三景に対し、近代の公募による選定という違いがある。湖と火山、松原と富士山、奇岩と渓谷と、海の景色が並ぶ日本三景とは対照的な顔ぶれになっている。
めぐり方のヒント
三景は宮城・京都・広島に分かれ、北端の松島と南端の宮島は直線でも約900km離れている。一度の旅でまとめてめぐるのは現実的ではないため、東北・関西・中国地方それぞれを訪れる旅に1か所ずつ組み込んでいくとよい。いずれも仙台・京都・広島から日帰りできる距離にある。
三景とも、移動そのものが眺めの一部になっている。松島は遊覧船で島影のあいだへ入り、天橋立はリフトやモノレールで展望所へ上がり、宮島はフェリーで海側から大鳥居に近づく。特に宮島は潮位で景色が入れ替わるので、干潮と満潮の時刻を調べてから訪れる時間を決めたい。
松島の湾を高い位置から見たいなら、大高森・富山・多聞山・扇谷の4か所からの眺めが「四大観」と呼ばれている。ただし4か所は湾を囲むように散らばり、それぞれ見える範囲も異なる。松島海岸の中心部からは離れているため、まとめて回るには車が要る。
よくある質問
Q. 日本三景の覚え方は。
北から順に松島(宮城県)・天橋立(京都府)・宮島(広島県)。三つとも海の景色である点が共通しているので、「東北の島、日本海側の砂州、瀬戸内の社殿」と地方と地形をセットにすると並びごと覚えやすい。
Q. 宮島と厳島は同じ場所なのか。
同じ島を指す。島の地名は厳島で、宮島は厳島神社があることに由来する通称である。江戸時代の文献では厳島と記されることが多い。
Q. 日本三景と新日本三景は何が違うのか。
日本三景は江戸時代の文人の評価に由来する松島・天橋立・宮島。新日本三景は1915年の全国投票で選ばれた大沼・三保松原・耶馬渓で、選ばれた時代も経緯も別である。
Q. 日本三景はすべて世界遺産なのか。
世界文化遺産に登録されているのは宮島の厳島神社だけで、1996年の登録である。ただし松島・天橋立・厳島の三か所は、いずれも国の特別名勝に指定されている。
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