旅のテーマ

天空の城とは

秋から春の冷えた朝、盆地の底に霧がたまり、山の上の石垣と天守だけが雲の上に残る。竹田城跡、備中松山城、越前大野城、郡上八幡城、赤木城跡。天空の城と呼ばれる城は、いずれも山の上に築かれている。

「天空の城」は国や自治体が定めた選定ではなく、雲海に浮かんで見える山城につけられた呼び名である。城が高い位置にあること、麓に霧のたまる盆地や谷があること、そして城を横から見渡せる別の山があること。この三つがそろって初めて、雲の上に浮かぶ姿を見ることができる。ここでは条件を備えた5か所をまとめている。

天空の城 一覧(北から南へ)

城名 所在地 見どころ
越前大野城 福井県大野市 大野盆地に浮かぶ標高249mの亀山に立つ。金森長近が1576年から4年かけて築き、現在の天守は1968年の再建。雲海が出るのは10月から4月末で、年に10日から20日ほど。城を望むなら西へ約1kmの戌山城跡へ登る。
郡上八幡城 岐阜県郡上市 標高354mの八幡山の上に、1933年に建てられた木造の再建天守。木造で再建された天守としては国内最古で、山上からは吉田川と郡上八幡の町並みを見下ろす。朝霧に浮かぶ姿から天空の城とも呼ばれる。
竹田城跡 兵庫県朝来市 標高353.7mの古城山に、8,600m²を超える穴太積みの石垣が尾根を覆う。建物はなく石垣だけが残る。雲海シーズンは9月中旬から12月初旬。向かいの立雲峡から全景を見渡せる。
備中松山城 岡山県高梁市 標高430mの臥牛山小松山に立ち、現存12天守では最も高い場所にある唯一の山城天守。天守と二重櫓、土塀の一部が重要文化財。雲海に浮かぶ姿は、別の山にある雲海展望台から望む。
赤木城跡 三重県熊野市 熊野の山中、標高約230mの丘に藤堂高虎が1589年ごろ築いた城跡。自然石を積む野面乱層積みの石垣が、主郭で高さ4mほど残る。1989年に「赤木城跡及び田平子峠刑場跡」の名で国の史跡に指定された。

雲海が出る条件と時期

雲海の正体は放射霧で、盆地の底で起きやすい。晴れて風のない夜に地面の熱が空へ逃げ、明け方にかけて気温が下がると、空気中の水蒸気が霧になって低いところにたまる。これが山の中腹より下に広がると、上から見て雲の海のように見える。

条件は三つ。前夜がよく晴れていること、朝と日中の気温差が大きいこと、風が弱いことである。前日に雨が降って空気が湿っていると、なお出やすい。時期は秋から春で、越前大野城では11月がいちばん出やすいとされる。時間帯は日の出前から午前8時ごろまでで、日が高くなると霧は消えていく。

出るかどうかは前夜まで読み切れない。越前大野城で記録された出現日数も、年によって10日前後から20日ほどまで振れる。旅程を雲海だけに賭けず、出れば儲けものと構えておくほうが結果的に楽しめる。

城を見上げる展望台は、たいてい別の山にある

雲海に浮かぶ城の写真は、城の上からではなく向かいの山から撮られている。城に登ってしまうと自分が雲海の上に立つことになり、浮かぶ姿は見えない。眺めたいのか、歩きたいのかで行き先が変わる。

竹田城跡なら南東の立雲峡、備中松山城なら別の山にある雲海展望台、越前大野城なら西の戌山城跡が定番の眺めになる。いずれも夜明け前の暗い山道を登ることになるので、ヘッドライトと滑りにくい靴が要る。城そのものを歩くのは霧が晴れたあとに回せば、一日で両方を味わえる。

めぐり方のヒント

5城は福井から三重・岡山まで散らばる。越前大野城と郡上八幡城は直線で約50kmと近く、九頭竜川沿いに続けてめぐれる。竹田城跡と備中松山城は約125kmで、山陰から山陽へ抜ける旅に収まる。赤木城跡だけは紀伊半島の南に離れており(郡上八幡城から約225km)、熊野をめぐる旅に組み込むことになる。

雲海を狙うなら前泊が前提になる。日の出前に展望台に立つには、当日移動では間に合わない。麓の宿を取り、天気予報で前夜の晴天と朝の冷え込みを確かめてから起きる時間を決めたい。

竹田城跡には積雪期の閉山があり、期間は年によって変わる。備中松山城は登城整理バスの運行日に八合目のふいご峠への自家用車の乗り入れが規制され、五合目の城見橋公園駐車場でバスに乗り換えることになる。いずれも山の上の城なので、訪問前に各市の公式情報を確認しておくと空振りしない。

よくある質問

Q. 天空の城は誰が選んだのか。

公的な選定はない。竹田城跡が雲海に浮かぶ写真が広まったことをきっかけに、同じように霧の上に現れる山城が天空の城と呼ばれるようになった。数も決まっておらず、資料によって挙げる城は異なる。

Q. 天空の城のうち、江戸時代以前の天守が残っているのはどれか。

備中松山城だけで、現存12天守のひとつにあたる。郡上八幡城と越前大野城の天守はいずれも昭和の再建で、竹田城跡と赤木城跡には建物がなく石垣だけが残る。

Q. 竹田城跡が「日本のマチュピチュ」と呼ばれるのはなぜか。

建物のない石垣だけの城跡が山の稜線を覆う姿が、アンデスの高地に石積みが残るマチュピチュの遺跡と重なるためである。雲海が出ると山の上だけが浮かんで見える点も、その印象を強めている。

Q. 雲海が出なかったら見るものがないのか。

そんなことはない。竹田城跡の穴太積みの石垣、備中松山城の現存天守、赤木城跡の野面乱層積みと、いずれも城そのものに見どころがある。雲海は条件がそろったときの上乗せと考えておくとよい。

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めぐたびのマスコット「めぐのすけ」
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