旅のテーマ
日本三名橋とは
五街道の起点に架かる石橋、錦川を五つの弧で渡る木橋、水面に二つの半円を映す石橋。日本橋、錦帯橋、眼鏡橋。いずれも初代は江戸時代に架けられ、流失や被災のたびに架け直されながら、同じ場所で今も渡れる。
日本三名橋は、東京都中央区の日本橋、山口県岩国市の錦帯橋、長崎県長崎市の眼鏡橋を指すことが多い。ただし誰がいつ選んだのかを示す記録はなく、日本橋の代わりに別の橋を挙げる説もある。三橋に共通するのは、初代が江戸時代に架けられ、流失や被災を乗り越えて同じ場所で使われ続けていることである。ただし現在の日本橋は明治44年に架け替えられた石橋で、江戸期の姿がそのまま残っているわけではない。
日本三名橋 一覧(東から西へ)
| 橋名 | 所在地 | 見どころ |
|---|---|---|
| 日本橋 | 東京都中央区 | 初代は1603年(慶長8年)に架けられ、五街道の起点となった。現在の橋は1911年(明治44年)架橋の橋長49mの石造二連アーチ。麒麟と獅子の青銅像が欄干を飾り、中央の路面に日本国道路元標が埋まる。1999年に国の重要文化財へ。 |
| 錦帯橋 | 山口県岩国市 | 1673年(延宝元年)、岩国藩主・吉川広嘉が錦川に架けた全長193.3mの木造五連アーチ。石積みの橋脚のあいだに組木を重ねて反りをつくる。1950年の台風で流失し1953年に再建。1922年に国の名勝に指定されている。 |
| 眼鏡橋 | 長崎県長崎市 | 1634年(寛永11年)、興福寺の二代住持・黙子如定が中島川に架けた石造二連アーチ。長さ22.35m、幅4.68m。風のない日は水面に映る二つの半円が合わさり、丸い眼鏡の形を結ぶ。1960年に国の重要文化財へ。 |
三名橋と呼ばれる由来
「日本三名橋」は、選者も成立時期もはっきりした記録がない呼び名である。一般には日本橋・錦帯橋・眼鏡橋の三つを指すが、日本橋の代わりに皇居の二重橋を挙げる説、滋賀の瀬田の唐橋を挙げる説もある。ただし二重橋は明治以降に架けられた橋で江戸期の三橋とは時代が合わず、瀬田の唐橋は「日本三古橋」との混同とみられている。
出所がはっきりしないまま三つ並べる言い方だけが定着した点は、明治期の出版物からしか呼び名を確かめられない日本三名園と似ている。江戸時代の文献にさかのぼれる日本三景のような明確な初出を持たないので、「三名橋」という枠自体を厳密に扱う必要はない。三つとも江戸期の土木技術が今も現役で立っている、という見方のほうが実態に近い。
石と木、二通りのアーチ
三橋のうち二つは石造アーチである。石のアーチは、上からの荷重を圧縮の力に変えて両端の地盤へ逃がす仕組みで、引っ張りに弱い石でも長い径間を渡せる。日本には江戸初期に中国から伝わり、眼鏡橋は黙子如定が中国から石工を招いて架けさせたもので、二連アーチの石橋としては現存最古にあたる。日本橋も同じ石造アーチだが、こちらは明治の橋で、西洋の橋梁技術と和風の装飾を組み合わせている。
一方の錦帯橋は木でアーチを組む。木は石のように圧縮だけで支えられないため、短い部材を何段も重ねて反りをつくり、金具で締め上げて一体化させる。増水に耐えるよう橋脚は石で固め、橋そのものは定期的に架け替える前提で設計されている。2002年から2004年3月にかけては「平成の架け替え事業」で橋体が架け替えられた。作り直しながら形を受け継ぐという発想が、石橋とは根本的に違う。
めぐり方のヒント
三橋は東京・山口・長崎に分かれ、日本橋と眼鏡橋は直線でも約970km離れている。まとめてめぐる旅は組みにくいが、錦帯橋と眼鏡橋は約265kmで、山陽から九州へ抜ける旅なら二つを続けて収められる。
日本橋は東京駅から歩ける距離にあり、いつでも渡れる。ただし橋の上を首都高速の高架が覆っているため、橋の姿を見たいなら川沿いの遊歩道や日本橋川の船から見上げるほうがよい。高架は地下化工事が進んでおり、撤去までにはまだ年月がかかる。
錦帯橋は渡るのに料金がかかり、橋を渡った先の山上には岩国城がある。ロープウエーとの共通券があるので、橋と城をあわせて半日ほど。眼鏡橋は中島川に石橋が連なる区間の一つで、上流下流に並ぶ石橋を歩いてつなぐと長崎の街のつくりが見えてくる。
よくある質問
Q. 日本三名橋の覚え方は。
東から順に日本橋(東京都)・錦帯橋(山口県)・眼鏡橋(長崎県)。真ん中の錦帯橋だけが木橋で、両端の二つが石橋。材で挟んで覚えると並びごと思い出しやすい。
Q. 日本三名橋と日本三奇橋は何が違うのか。
三奇橋は構造の珍しさで選ばれた橋を指し、錦帯橋・甲斐の猿橋・越中の愛本橋を挙げるのが一般的である。錦帯橋だけが両方に名を連ねる。どちらも公的な選定ではなく、挙げる橋は資料によって異なる。
Q. 眼鏡橋はなぜその名前なのか。
二つのアーチが川面に映り、水面をはさんで二つの円がつながって丸い眼鏡のように見えることに由来する。風がなく水面が静かな日ほど、その形がはっきり現れる。
Q. 三橋とも今でも渡れるのか。
三つとも渡れる。日本橋と眼鏡橋は無料で通行でき、錦帯橋のみ渡橋に料金がかかる。いずれも重要文化財や名勝に指定されたまま、日常の橋として使われ続けている。
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