旅のテーマ

国宝五城とは

松本、犬山、彦根、姫路、松江。江戸時代以前の天守が残る12城のうち、天守が国宝に指定されているのはこの5城である。長らく4城で、松江城が加わったのは2015年だった。

国宝五城は、長野県の松本城、愛知県の犬山城、滋賀県の彦根城、兵庫県の姫路城、島根県の松江城を指す。いずれも江戸時代以前に建てられた天守がそのまま残り、天守と付属する櫓が国宝に指定されている。現存12天守のうちの5城で、残る7城の天守は重要文化財である。

国宝五城 一覧(東から西へ)

城名 所在地 見どころ
松本城 長野県松本市 五重六階の大天守に乾小天守・辰巳附櫓・月見櫓がつながる連結複合式。初重から最上重まで黒漆塗りの下見板で覆われ、年に一度塗り直される。水堀の向こうに天守、背後に飛騨山脈が重なる。
犬山城 愛知県犬山市 木曽川南岸、高さ約88mの丘に立つ三重四階地下二階の望楼型天守。最上階から木曽川と濃尾平野を見渡せる。濃尾地震で傷んだ天守の修理を条件に1895年に旧藩主の成瀬家へ譲られ、2004年に財団へ移るまで国内で最後まで個人が所有した城だった。
彦根城 滋賀県彦根市 三重三階と小ぶりながら、切妻・入母屋・唐破風と各重に異なる破風を重ねて表情をつくる。長浜城から移したと伝わる天秤櫓、大名庭園の玄宮楽々園が城内に残る。1992年から世界遺産の暫定リストにある。
姫路城 兵庫県姫路市 大天守と三つの小天守を渡櫓でつなぐ連立式。14.85mの石垣の上に31.5mの建物が載る。壁も軒裏も白漆喰で塗り込めた白さが遠くからでも際立つ。1993年12月、日本で最初に登録された4件の世界遺産のひとつ。
松江城 島根県松江市 四重五階地下一階の望楼型で、山陰に唯一残る天守。黒い下見板の質実な構えで、標高29mの丘から宍道湖を望む。城の堀はほぼ往時のまま残り、遊覧船が3.7kmを50分ほどでめぐる。

五城が国宝になるまでと、松江城が2015年に加わった理由

いまの国宝は、1950年に施行された文化財保護法にもとづく指定である。それ以前の国宝保存法による「旧国宝」は制度の切り替えでいったん重要文化財に移され、そのなかから改めて国宝が選び直された。姫路城の大天守などが1951年6月9日、松本城・犬山城・彦根城の天守が1952年3月29日に指定され、以後この4城が長く「国宝四城」と呼ばれた。

松江城が加わったのは2015年7月8日である。天守の築造年を示す確かな資料が長く見つかっていなかったが、2012年に松江神社で「慶長拾六年正月吉祥日」と記された祈祷札が確認され、1611年の完成が裏づけられた。これが決め手となり、63年ぶりに天守の国宝が一つ増えた。

現存12天守との違い

現存12天守は、江戸時代以前の天守が現存する城の全体を指す。国宝五城はそのうち天守が国宝に指定された5城で、別々の基準ではなく包含の関係にある。残る弘前城・丸岡城・備中松山城・丸亀城・松山城・宇和島城・高知城の7城は、天守が重要文化財である。

重要文化財の側が劣るという意味ではない。国宝は重要文化財のなかから特に価値が高いと判断されたものを選ぶ仕組みで、松江城のように資料が見つかって評価が変わることもある。

めぐり方のヒント

5城は長野から島根まで、東西およそ450kmの範囲に並ぶ。犬山城と彦根城は直線で約64kmと近く、名古屋を起点にすれば続けてめぐれる。彦根城と姫路城が約150km、姫路城と松江城が約165kmで、ここから先は東海道・山陽の幹線に沿って西へ進む組み立てになる。松本城だけは中央本線・篠ノ井線の側にあり、別の旅に分けるほうが素直である。

天守は木造のまま残っているので、内部は階段が急で段差も大きい。特に松本城と姫路城は最上階までの上り下りが長く、履き慣れた靴のほうがよい。混雑期の姫路城では、大天守への入場が整理券制になることがある。

見どころは天守の中だけではない。彦根城は玄宮楽々園から天守を借景に眺められ、松江城は堀の遊覧船から石垣と櫓台を水面の高さで見上げられる。犬山城は木曽川の対岸から城全体を望むことができ、松本城は水堀越しの正面と背後の山並みが同じ画に入る。

よくある質問

Q. 天守以外に国宝の城郭建築はあるのか。

ある。京都の二条城は二の丸御殿の6棟が1952年に国宝へ指定されているが、天守は1750年の落雷で焼失し、いまは天守台だけが残る。姫路城でも大天守以外に小天守や渡櫓が国宝に含まれる。国宝五城は、あくまで天守が国宝である城を指す呼び方である。

Q. 大阪城や名古屋城はなぜ国宝五城に入らないのか。

現在の天守が江戸時代以前のものではないためである。大阪城の天守は1931年、名古屋城の天守は1959年の再建で、いずれも一度失われた天守を後年に建て直したものにあたる。

Q. 国宝五城のうち世界遺産はどれか。

姫路城が1993年12月、日本で最初に登録された4件の世界遺産のひとつになった。同時に登録されたのは、文化遺産の法隆寺地域の仏教建造物と、自然遺産の屋久島・白神山地である。彦根城は1992年から暫定リストに載っているが、登録には至っていない。

Q. 五城の天守はすべて中に入れるのか。

いずれも天守内部が公開されている。ただし修理工事や催事で公開状況が変わることがあるため、訪問前に各城の公式情報を確認するとよい。

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