旅のテーマ

出羽三山とは

羽黒山、月山、湯殿山。山形県中央部にそびえる三つの山が、それぞれ現在・過去・未来を表すとされてきた。里に近い杉木立の参道、夏でも雪渓の残る山頂の社殿、社殿を持たず巨岩そのものを祀る秘境。同じ「三山」でも、たどる道と迎える景色はまるで違う。

出羽三山は、山形県鶴岡市を中心に広がる羽黒山(414m)、月山(1984m)、湯殿山(1504m)の総称である。社伝では飛鳥時代に蜂子皇子(能除太子)が開いたと伝わり、修験道の霊場として栄えてきた山岳信仰の地である。同じ「三山」を名乗る熊野三山は参詣道とともに世界遺産へ登録されているが、出羽三山は世界遺産ではなく、2016年に「自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』」として日本遺産に認定されている(詳しくはFAQで触れる)。

出羽三山 一覧(羽黒山・月山・湯殿山の順)

神社名 所在地 見どころ
羽黒山(五重塔・三神合祭殿) 山形県鶴岡市 石段2446段の参道脇に、平将門の創建と伝わる国宝・羽黒山五重塔が立つ。山頂には羽黒・月山・湯殿の三神を祀る三神合祭殿があり、雪深い庄内で唯一、通年参拝できる。
月山神社 山形県鶴岡市 標高1984mの山頂に鎮座し、『延喜式神名帳』に名神大社として名を連ねる。開山は例年7月上旬から9月中旬に限られ、夏でも雪渓の残る稜線を歩いてたどり着く社殿には静けさが漂う。
湯殿山神社本宮 山形県鶴岡市 「語るなかれ、聞くなかれ」と伝わる湯殿山信仰の中心。社殿を持たず、温泉が湧く巨岩そのものを御神体とし、素足で登って参拝する。開山は例年6月上旬から11月上旬。
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出羽三山の由来(蜂子皇子の開山伝説)

社伝によれば、出羽三山を開いたのは崇峻天皇の皇子・蜂子皇子(能除太子)である。推古元年(593年)、蘇我氏に父帝を弑された蜂子皇子は難を逃れて出羽国へ入り、三本足の霊烏に導かれて羽黒山に登ったと伝わる。羽黒山を開いたのち月山、湯殿山も開いたとされ、三山を一体の信仰として束ねる開山伝承になった。

出羽三山の修験道には、土着の羽黒派に加えて当山派・本山派も入り込み、三派の修行の場として重なり合ってきた。江戸時代初期には羽黒山と月山が天台宗、湯殿山のみが真言宗に分かれて改宗し、明治6年(1873年)の廃仏毀釈で別当寺が廃されて、現在の神社体制になった。

現在・過去・未来に見立てられた三山

出羽三山めぐりが特徴的なのは、三山それぞれに時間の見立てがあることだ。羽黒派修験では、人里に近い羽黒山を現世利益を祈る「現在」の山、月を想わせる月山を死後の安楽を祈る「過去」の山、生命がよみがえる湯殿山を「未来」の山とした。

江戸時代、この見立ては庶民の間で現在・過去・未来をめぐる「生まれかわりの旅」として広まった。羽黒修験ではこれを三関三渡の旅と呼ぶ。羽黒山で現世の幸せを願い、月山の雪渓を歩いて死後の安楽を祈り、湯殿山の御神体に素足で登って生まれかわりを果たす、という一続きの参拝が三山めぐりの本来の形である。

五重塔と三神合祭殿の来歴

羽黒山の顔となっている二つの建物にも、それぞれ来歴がある。五重塔は承平年間(931〜938年)の平将門創建と伝わる、総高約29.2mの東北最古の塔である。応安5年(1372年)に別当職の大宝寺政氏が再建したとされ、1966年に国宝指定された。彩色を施さない素木造りで、屋根は杮(こけら)葺きである。

山頂の三神合祭殿は、羽黒・月山・湯殿の三神を一つの社殿にまとめて祀る建物である。文化8年(1811年)の火災で焼失し、文政元年(1818年)に再建されたのが現在の社殿で、2000年に重要文化財に指定された。

めぐり方のヒント

三山は同じ鶴岡市内にまとまっているが、月山と湯殿山は山道を挟んで隔たっており、一日でまとめて参拝するのは慌ただしい。羽黒山頂から月山八合目の駐車場までは車で約1時間、湯殿山の参籠所前までは約1時間20分かかる。随神門から石段を上って羽黒山を参拝したのち、日を改めて月山、湯殿山を回る二泊の行程が組みやすい。

月山と湯殿山は積雪のため通年参拝できない。月山神社本宮の開山は例年7月上旬から9月中旬、湯殿山神社本宮は例年6月上旬から11月上旬に限られ、これ以外の時期は雪で道が閉ざされる。通年参拝できるのは山麓に近い羽黒山だけで、山頂の三神合祭殿では三山の神をまとめて参拝できる。

鶴岡駅から羽黒山頂までは路線バスで1時間弱。月山・湯殿山へは公共交通の便が乏しく、期間中も本数が限られるため、車での移動が現実的である。

よくある質問

Q. 出羽三山の覚え方は。

羽黒山・月山・湯殿山の三つ。三山の神々は羽黒山頂の三神合祭殿に一つの社殿でまとめて祀られているため、まずそこで三神の名を確かめると覚えやすい。三山がそれぞれ現在・過去・未来に見立てられる由来は前段で触れたとおり。

Q. 出羽三山は世界遺産なのか。

登録されていない。同じ「三山」を名乗る熊野三山は参詣道とともに「紀伊山地の霊場と参詣道」として2004年に世界遺産へ登録されたが、出羽三山は2016年に「自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』」として日本遺産に認定されている。世界遺産が資産そのものを国際的に登録する制度であるのに対し、日本遺産は地域の文化財群を一つの物語としてまとめ、文化庁が認定する国内制度で、両者は別の枠組みである。

Q. 三山はいつでも参拝できるのか。

羽黒山は通年参拝できるが、月山と湯殿山は積雪のため夏から秋の限られた期間しか参拝できない。開山期間の目安は「めぐり方のヒント」で触れたとおり。

Q. 蜂子皇子とは誰か。

出羽三山を開いたと社伝に伝わる崇峻天皇の皇子。羽黒山頂には蜂子皇子を祀る蜂子神社があり、神仏習合の時代は開山堂と呼ばれていた。参道の途中には皇子の御廟もあり、宮内庁が管理している。

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