旅のテーマ

日本三大夜景とは

函館山、摩耶山掬星台、稲佐山。海が街の縁を黒く切り取り、灯りの輪郭がそのまま地形になる。標高334m、690m、333m。高さも街の成り立ちも違う三つが、ひとつの呼び名でくくられている。

日本三大夜景は、北海道函館市の函館山、兵庫県神戸市の摩耶山掬星台、長崎県長崎市の稲佐山からの夜景を指す。三か所とも港をもつ街を高いところから見下ろす点が共通し、海の暗がりが灯りの縁を断ち切るため、街の形がそのまま光の形になって見える。ただし、この三つを誰がいつ選んだのかははっきりしていない。

日本三大夜景 一覧(北から南へ)

展望地名 所在地 見どころ
函館山 北海道函館市 標高334m。もとは火山島で、土砂が堆積してできた砂州により約5000年前に亀田半島とつながった陸繋島。両側から海に締めつけられた砂州の上に市街が乗り、この地形が夜景をくびれた形にする。
摩耶山掬星台 兵庫県神戸市 標高702mの摩耶山、その山頂近く標高690mにある展望広場。神戸から大阪湾沿いに続く市街の灯りが東西に長く伸びる。手で星を掬えるほど、という見立てが「掬星台」の名になった。
稲佐山 長崎県長崎市 標高333m。長崎港を囲んで斜面に家々が積み上がる地形が、灯りを平面ではなく立体に見せる。2012年の夜景サミットでモナコ・香港と並ぶ世界新三大夜景に選ばれた。山頂へはロープウェイと、中腹からのスロープカーで上れる。

三大夜景と呼ばれる由来

三名泉や三名園が文献や番付にさかのぼれるのに対し、三大夜景にはその種の出どころがない。選定した団体も発表年も分かっておらず、呼び名だけが定着している。

呼び名の出どころは分からないが、三か所が夜に上れる山になった経緯はたどれる。函館山では1898年に要塞の建設が始まり、1902年に完成した。以後、終戦まで要塞地帯として一般の入山が禁じられ、市民に再開放されたのは1946年、ロープウェイの開業は1958年である。摩耶山のケーブルカーはこれより早く1925年に開業しているが、1944年に不要不急線として休止し、再開は1955年だった。夜の山に誰でも上れるという前提そのものが、比較的新しい。

「1000万ドルの夜景」はどこの夜景か

もとの言い回しは「100万ドルの夜景」で、神戸で生まれたとされる。きっかけは1953年10月、関西電力の広報誌に載った当時の副社長・中村鼎のコラムと言われる。六甲山から見える大阪・尼崎・芦屋・神戸の電灯を496万7000個と数え、ひと月の電気代を当時の1ドル360円で換算すると100万ドル強になる、という試算だった。

その後、為替と電気代の変化にあわせて「1000万ドル」と言われるようになった。いまは神戸だけでなく長崎でも同じ呼び方が使われるため、この言葉だけでどちらを指すかは決まらない。

めぐり方のヒント

三か所は北海道・兵庫・長崎に散っている。函館山と稲佐山は直線でも約1380km離れており、まとめてめぐる旅は組めない。その街を訪れる旅に一か所ずつ組み込むことになる。

いちばんの要点は時刻である。日没直後の空に色が残る時間帯は、灯りと一緒に街の輪郭や海の面も見える。完全に暗くなると光の点だけになるので、印象がかなり変わる。日没時刻は夏と冬で1時間半以上ずれるため、訪問日の時刻を調べてから上りたい。山頂は市街地より風が強く気温も低く、特に函館山と摩耶山では季節を問わず上着が要る。

上り方にはそれぞれ制約がある。函館山はロープウェイのほか登山道路を車で上れるが、観光期の夕方から夜は一般車が通行止めになり、冬期は全面通行止めになる。時間帯も期間も年によって変わるので事前に確認したい。摩耶山掬星台へは、まやビューラインのケーブルカーとロープウェーを乗り継ぐ。稲佐山は長崎ロープウェイのほか、中腹の駐車場から山頂へスロープカーが通じている。いずれも下山は最終便の時刻に縛られる。

よくある質問

Q. 日本三大夜景と新日本三大夜景は何が違うのか。

日本三大夜景は函館山・摩耶山掬星台・稲佐山を指す古くからの呼び名で、選定者ははっきりしない。新日本三大夜景は2003年に民間の団体が発表したもので、山梨県の笛吹川フルーツ公園、奈良県の若草山、福岡県の皿倉山の三か所を指す。別の枠組みなので、新しいほうが古いほうを置き換えたわけではない。

Q. 「日本新三大夜景都市」とはどれのことか。

夜景観光コンベンション・ビューローが3年ごとに改選しているもので、展望地ではなく都市を選ぶ点が異なる。2024年12月の夜景サミットで発表された顔ぶれは北九州市・横浜市・長崎市。長崎市は2015年の創設から選ばれ続けている唯一の都市である。

Q. 三か所で標高がいちばん高いのはどれか。

摩耶山掬星台で標高690m、山そのものは702mある。函館山は334m、稲佐山は333mとほとんど同じ高さである。低い二つは街との距離が近いぶん、灯りが大きく迫って見える。

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