旅のテーマ
日本六古窯とは
釉薬をかけずに焼き締めた土の肌、薪の灰がかかってできる自然釉。越前、瀬戸、常滑、信楽、丹波立杭、備前。中世に始まった窯が、いまも同じ土地で火を焚き続けている。
日本六古窯は、福井県越前町の越前焼、愛知県瀬戸市の瀬戸焼、愛知県常滑市の常滑焼、滋賀県甲賀市の信楽焼、兵庫県丹波篠山市の丹波立杭焼、岡山県備前市の備前焼を指す。平安時代末から鎌倉時代にかけて始まり、以後途切れることなく現在まで生産が続いている六つの産地である。2017年には六市町が連携して日本遺産に認定された。
日本六古窯 一覧(通称の並び順)
| 産地名 | 所在地 | 見どころ |
|---|---|---|
| 越前焼 | 福井県越前町 | 12世紀後葉に常滑の技術が入って始まり、これまでに200基以上の窯跡が見つかっている。鉄分を含む土と薪の灰が生む焼き締めが持ち味。越前陶芸村に福井県陶芸館があり、窯元は織田・宮崎地区に集まる。 |
| 瀬戸焼 | 愛知県瀬戸市 | 「せともの」の語源になった産地で、六古窯では唯一、中世から釉薬をかけた陶器を焼いてきた。瀬戸蔵ミュージアムが窯と工房を再現し、窯道具の廃材を積み上げた塀が続く窯垣の小径を歩ける。 |
| 常滑焼 | 愛知県常滑市 | 中世に三千基を超える窖窯が知多半島の斜面に掘られ、大甕や壺を船で東北から九州まで運んだ産地。やきもの散歩道には土管や焼酎瓶を壁に積んだ土管坂が残り、朱泥の急須でも知られる。 |
| 信楽焼 | 滋賀県甲賀市 | 古琵琶湖層の粘土に恵まれ、耐火性の高い土が大きな器を可能にした産地。狸の置物で親しまれるが、本来の見どころは炎が土に出す火色と、灰をかぶった景色。滋賀県立陶芸の森に窯と工房、美術館が集まる。 |
| 丹波立杭焼 | 兵庫県丹波篠山市 | 京と大阪に近い山あいの立杭に窯元が集まる。1895年に築かれた全長47mの登窯が現存最古のものとして残り、兵庫県の有形民俗文化財に指定されている。丹波の土と松灰が生む深い自然釉を、兵庫陶芸美術館が中世から現代まで通して見せる。 |
| 備前焼 | 岡山県備前市 | 釉薬を使わず土だけで焼き締める。窯の中の炎の通り道、灰のかかり方、藁の当たり方で模様が一つずつ変わり、同じものが二つとない。窯元とギャラリーはJR伊部駅の周辺に密集する。 |
六古窯という呼び名の由来
「六古窯」は古くからの言葉ではなく、陶磁研究者で陶芸家の小山冨士夫が1948年(昭和23年)ごろに名づけたものである。中世に始まり近代まで途切れず続いた窯を選び出した分類で、以後、日本のやきものを語るときの基本の枠組みとして定着した。
六つに限る根拠が動かないわけではない。中世の窯跡は全国で数十か所が確認されており、渥美や珠洲のように、規模の大きさが知られながら近世に途絶えた産地もある。それでも六古窯が使われ続けているのは、「中世に始まり、いまも同じ土地で焼き続けている」という条件を、この六か所がそろって満たしているからである。窯跡の古さではなく、途切れていないことが選定の軸になっている。
日本遺産「きっと恋する六古窯」
2017年(平成29年)4月28日、越前町・瀬戸市・常滑市・甲賀市・丹波篠山市(当時は篠山市)・備前市の六市町が連携し、「きっと恋する六古窯-日本生まれ日本育ちのやきもの産地-」として文化庁の日本遺産に認定された。個々の窯跡や登窯を文化財として指定するのではなく、六産地を貫く一つの物語として認められた点が特徴である。
認定を受けて六市町は協議会をつくり、共通の案内やイベントを進めている。産地ごとに別々に訪ねてきた六か所を、ひとつづきの旅として組み立てやすくなったのは、この枠組みができたあとのことである。
めぐり方のヒント
六産地は福井から岡山まで散らばるが、隣り合う産地は意外と近い。瀬戸と常滑はどちらも愛知県で直線約44km、名古屋を起点に一日で二か所をめぐれる。常滑と信楽が約70km、信楽と丹波立杭が約85km、丹波立杭と備前が約95kmで、東海から山陽へ数珠つなぎに西進できる。越前だけが日本海側に離れており(瀬戸から約125km)、北陸の旅に分けるほうが素直である。
産地ごとに春や秋の陶器まつりがあり、その時期は窯元が一斉に開いて品数も増える。ただし混雑と交通規制もあるので、じっくり見たいなら平常日を選ぶ手もある。日程は年によって変わるため、各市町の公式情報で確かめておきたい。
窯元は住まいを兼ねていることが多く、見学できる範囲は掲示や案内に従う。買ったうつわは重く、割れやすい。宅配を頼めるかどうかを先に聞いておくと、そのあとの行程が楽になる。
よくある質問
Q. 日本六古窯の覚え方は。
越前(福井)だけが日本海側にあり、残る瀬戸・常滑(愛知)、信楽(滋賀)、丹波立杭(兵庫)、備前(岡山)は中部から山陽にかけて東から西へ並ぶ。「日本海側に一つ、あとは東海道筋を西へ」と分けると抜けにくい。
Q. 美濃焼はなぜ六古窯に入らないのか。
六古窯は、生産量で大きな比重を占める美濃以外にも古い産地があることを示すために選ばれた枠であり、美濃は初めから外して考えられている。美濃の窯は瀬戸と近い系統にあり、瀬戸に代表させる見方も広い。
Q. 六古窯はすべて釉薬を使わないのか。
使う産地もある。中世から釉薬をかけた陶器を焼いてきたのは瀬戸で、他の五産地は本来、釉薬を使わずに焼き締める焼き物から始まった。現在はどの産地でも釉薬をかけたうつわが作られている。
Q. 六古窯はどこも同じ時期に始まったのか。
始まりには幅がある。常滑は平安時代末に大規模な窯場となり、越前は12世紀後葉、信楽は鎌倉時代中期に、いずれも常滑の技術を受けて開窯した。常滑が周辺の産地へ技術を広げた関係が、六古窯のなかにある。
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